今回は、90年代の洋楽HIP HOPからおすすめの名曲を一気に紹介していきます。ラップが世界の音楽の中心へと駆け上がっていったこの時代は、まさに“黄金期”。当時をリアルタイムで知らない人も、これを入り口に浴びるように聴いてもらえたらうれしいです。
90年代はHIPHOPの全盛期
90年代はHIP HOPの全盛期だと、私は思っています。この頃は本当に名曲が多く、正直どれを選ぶか悩むほど。私自身はこの時代まだ小学生くらいで、リアルタイムで聴けなかったのが今でも心残りです。
ひと口に90年代HIP HOPと言っても、その表情はさまざまです。ニューヨークを中心としたイーストコーストは、ジャズやソウルのサンプリングと硬派なリリック(歌詞)で“ブーム・バップ”を突き詰めました。一方、ロサンゼルスを拠点とするウェストコーストは、シンセの効いた重低音グルーヴ「Gファンク」で世界を踊らせます。さらにジャズと融合したジャズ・ラップや、社会に切り込む政治的なラップまで——ジャンル内の多様さそのものが、この時代の豊かさでした。
イースト対ウェストの対立が悲しい事件を招いた時代でもありましたが、そこで生まれた楽曲群は今なお色褪せません。それでは、私の好きな名曲を紹介していきます。
90年代HIPHOPの名曲たち
Dr. Dre – Still D.R.E. ft. Snoop Dogg
あまりにも有名な、あのピアノのリフから始まる一曲。N.W.A.を経てソロ、そしてプロデューサーとして西海岸を築いたドクター・ドレーの、1999年のアルバム『2001』を象徴するナンバーです。スヌープ・ドッグが客演で復帰し、Gファンクの完成形とも言える磨き抜かれたサウンドを聴かせます。
90年代の入り口としても出口としても機能する一曲で、West Coastのグルーヴを知らない人にまず勧めたい定番。イントロが鳴った瞬間に空気が変わる、という感覚をぜひ体験してみてください。
N.W.A. – Straight Outta Compton
ギャングスタ・ラップの原点にして頂点。アイス・キューブ、ドクター・ドレー、イージー・Eらを擁したN.W.A.が、コンプトンの現実をむき出しの言葉で叩きつけた衝撃作です。厳密には80年代末の楽曲ですが、これ抜きに90年代の西海岸シーンは語れません。後の映画化でも話題になった、歴史を動かした一曲です。
The Notorious B.I.G. – Juicy
ブルックリンの伝説、ノトーリアス・B.I.G.のデビュー作『Ready to Die』を代表する一曲。貧困からの成り上がりを軽やかなフロウで描いた、まさに“ヒップホップ版サクセスストーリー”です。ムテュームの名曲をサンプリングした心地よいトラックと、圧倒的なストーリーテリングは、イーストコースト黄金期の象徴と言えます。
ビギーはこの数年後に凶弾に倒れてしまいますが、残した楽曲の完成度は今なお別格。ラップで“物語を語る”ことの魅力を、まずはこの曲で味わってみてください。
Public Enemy – Fight The Power
スパイク・リー監督の映画『Do the Right Thing』のために書かれた、ヒップホップ史上もっとも重要なプロテスト・ソングのひとつ。チャック・Dの力強いラップと、ノイズを重ねたBomb Squadのプロダクションが、社会への怒りをそのまま音にしています。ラップが強力なメッセージの器になり得ることを証明した金字塔です。
Wu-Tang Clan – Protect Ya Neck
ニューヨークの9人組、ウータン・クランを世に知らしめたデビュー曲。RZAが手がけるザラついたビートの上を、個性の異なるMCたちが次々とマイクリレーしていく様は圧巻です。名盤『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』の入り口として、生々しいストリートの熱がそのまま詰まっています。
2Pac – California Love
西海岸のアンセムと言えばこれ。2Pac(トゥパック)がドクター・ドレーと組み、ロジャー・トラウトマンのトークボックスを迎えた、多幸感あふれるGファンクの決定打です。『マッドマックス』風の砂漠のMVも印象的。若くしてこの世を去った彼の、輝きに満ちた瞬間が刻まれています。
2Pacは詩人のような情感と、社会への鋭い視線を併せ持ったラッパー。この曲でノリを掴んだら、『Dear Mama』や『Changes』といった深い一面もぜひ聴いてみてください。
Gang Starr – Jazz Thing
DJプレミアとグールーによるギャング・スターの、ジャズ・ラップを象徴する一曲。スパイク・リー監督作『Mo’ Better Blues』のために書かれ、ジャズの歴史を紡ぐようなリリックとブーム・バップが見事に溶け合います。“サンプリングは文化だ”と教えてくれる、大人のヒップホップです。
US3 – Cantaloop (Flip Fantasia)
ハービー・ハンコックの名曲「Cantaloupe Island」を大胆にサンプリングした、ジャズ・ラップ/アシッド・ジャズの代表曲。名門ジャズ・レーベル、ブルーノートの音源を正式に用いた点でも話題になりました。軽快なホーンとラップの相性が抜群で、ジャズ好きにも刺さる一曲です。
Das EFX – They Want EFX
「〜iggity」を連発する独特の“ヒカップ・フロウ”で一世を風靡したダス・イーエフエックス。早口で言葉を転がすユニークなスタイルは、当時のシーンに大きな影響を与えました。中毒性のある譜割りは、一度ハマると抜け出せません。
Method Man – Release Yo’ Delf
ウータン・クランの人気者、メソッド・マンのソロ作『Tical』からの一曲。しゃがれた声と唯一無二のカリスマ性が、RZAの重たいビートの上で存分に発揮されています。グループとソロ、両輪で90年代NYを盛り上げた彼の魅力が詰まっています。
Eric B. & Rakim – Don’t Sweat The Technique
“史上最高のリリシスト”の一人に必ず名が挙がるラキム。エリック・B.&ラキムによるこの曲は、複雑な韻とよどみないフロウで、ラップという表現の完成度を一気に引き上げました。後続のMCたちが手本にした、まさに教科書のような一曲です。
Puff Daddy, Faith Evans & 112 – I’ll Be Missing You
凶弾に倒れたノトーリアス・B.I.G.への追悼として、パフ・ダディ(現ディディ)が制作した一曲。ザ・ポリスの「Every Breath You Take」をサンプリングした美しいトラックに、フェイス・エヴァンスや112の歌声が重なります。全米No.1に輝き、悲しみを越えて世界中で歌い継がれました。
Naughty By Nature – Hip Hop Hooray
「Hey ho!」の掛け合いで、誰もが一体になれるパーティー・アンセム。トリーチ率いるノーティ・バイ・ネイチャーの代表曲で、ライブでの盛り上がりは格別です。ヒップホップの持つ“みんなで楽しむ”という原点を思い出させてくれます。
RUN-DMC – It’s Tricky
ヒップホップを一般層にまで届けた最重要グループ、RUN-DMC。名盤『Raising Hell』収録の本作は、ロックとラップを橋渡しした彼ららしいキャッチーな一曲です。80年代の楽曲ですが、90年代のシーンを準備した“開拓者たち”として外せません。
Nice & Smooth – Sometimes I Rhyme Slow
トレイシー・チャップマンの「Fast Car」をサンプリングした、切なくも心地よい一曲。グレッグ・ナイスとスムース・ビーの緩急あるラップが、メロウなトラックに気持ちよく乗ります。夜にじっくり浸りたい、味わい深いナンバーです。
Black Sheep – The Choice Is Yours
「You can get with this, or you can get with that」のフレーズで有名な、跳ねるようなグルーヴが楽しい一曲。ネイティブ・タンズの流れを汲むブラック・シープによる、ユーモアとセンスにあふれたクラシックです。CMなどでも使われ、耳にした人は多いはず。
さらに聴きたい90年代HIPHOPの名曲
紹介しきれなかった名曲もまだまだあります。ここからは“次の一歩”として、ぜひチェックしてほしい定番をまとめました。気になったタイトルは、ぜひ検索して聴いてみてください。
- Dr. Dre ft. Snoop Dogg – Nuthin’ but a ‘G’ Thang(1992)……Gファンクを決定づけた一曲。西海岸サウンドの教科書。
- Snoop Doggy Dogg – Gin and Juice(1994)……緩やかに揺れるグルーヴが最高な、Gファンク古典。
- Warren G ft. Nate Dogg – Regulate(1994)……メロウで甘い、Gファンクを象徴する名バラード的一曲。
- Coolio – Gangsta’s Paradise(1995)……映画『Dangerous Minds』主題歌。世界的クロスオーバーヒット。
- House of Pain – Jump Around(1992)……鳴った瞬間に飛び跳ねたくなるパーティー・アンセム。
- Cypress Hill – Insane in the Brain(1993)……独特のダミ声フロウとファンキーなトラックがクセになる。
- A Tribe Called Quest – Award Tour(1993)……ジャズの薫り漂う、ネイティブ・タンズの至宝。
- Nas – The World Is Yours(1994)……名盤『Illmatic』より。イーストコースト・リリシズムの金字塔。
- Mobb Deep – Shook Ones Pt. II(1995)……冷たく張り詰めた、ハードコアNYの決定版。
- Wu-Tang Clan – C.R.E.A.M.(1993)……ウータンを語る上で外せない、哀愁のクラシック。
まとめ
まだまだオススメはありますが、あまり詰め込みすぎても大変なので、このあたりで。音楽好きの方からすると「定番すぎる」と言われそうですが、90年代HIP HOPの良さは、一般にはまだまだ知られていないように思います。この記事がその入り口になればうれしいです。
近年はEDMやポップスに押され気味に感じることもありますが、古き良きHIP HOPには、今の音楽にはない生々しさと熱があります。気に入った曲があれば、ぜひそのアーティストの他の作品もチェックしてみてください。第二弾も、いつかやろうと思います。
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