ヘヴィメタル。音楽ジャンルの一つであり、メタルという名前でよく知られています。
が、あまり聞き馴染みがない、というかあまり好きではないという方も多いかもしれません。
元はロックのスタイルの一つであり、ハードロックとの境界線が曖昧でジャンルを区別するのがややこしい(そもそも音楽でジャンル分けが困難なものも珍しくありませんが)ものですが、そのヘヴィメタルからさらに過激さをプラスしたジャンルがスラッシュメタルです。
スラッシュメタルになるといよいよ万人受けしなくなってきます。ちなみにスラッシュとは「Thrash」で「鞭打つ」という意味があります。名前からして攻撃的ですが、そのまま攻撃的なサウンドが魅力であり、その攻撃的なサウンドが心地よく感じるか耳障りに感じるかでこのジャンルの好みはバキッと分かれることでしょう。
ハードコア・パンクの暴力的で攻撃的な要素をヘヴィメタルにミックスしたバキバキに喧嘩腰な音楽ジャンルで人に勧めやすいサウンドではないですが、そんな過激さ全開のジャンルでありながら世界的に有名かつわりと万人受けなバンドがいます。
それがメタリカ(Metallica)です。
スラッシュメタルなんざ耳に通したことないという麗しき女性ですら名前を知っているであろう世界的成功を収めたヴァイオレンス溢れる彼らについて今回はつづっていきましょう。
メタリカとは?
アメリカ合衆国のスラッシュメタルバンドで、1981年に結成されたメタリカ。
バンド名がキャッチーかつ独特ですが、このメタルとアメリカを合体したような名前はどうやって生まれたのでしょうか。
(アメリカのメタルバンドで、メタルとアメリカが合わさってりゃそりゃだれでも覚えるわって感じですね)
由来はドラムスのラーズ・ウルリッヒの友人がメタル雑誌をつくろうとしたときに出た候補の一つです。
そのメタル誌では使用されなかったため、バンドで使用することとなりました。
スラッシュメタルを開拓したバンドとしても有名で、彼らのスピード感あふれる演奏とハードコアの暴力的なサウンドは、イングランド出身のヘヴィメタルバンドのダイアモンド・ヘッドや、同じくイングランドのロックバンドであるモーターヘッドなどから影響を受けて音楽性を確立しました。
まだスラッシュメタルというジャンルが確立する以前からこれらのバンドはそれらしい大音量かつスピード感あふれまくるサウンドを生み出していたので、メタリカだけでなくほかのスラッシュメタルバンドにも多大な影響を与えています。
ちなみにダイアモンド・ヘッドはメタリカ同様にスラッシュメタルのBIG4に数えられるメガデスなどにも思いっきり影響を与えてますが、ダイアモンド・ヘッドはNWOBHMというイギリスの音楽ムーブメントから生まれたバンドです。
なんだNOWBHMって文字はって話ですが、これは1970年代後半にイギリスで始まったヘヴィメタルの勃興であるNew Wave Of British Heavy Metal(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル)の頭文字をとた言葉です。
1979年の夏にイギリスでまったく無名なバンドたちによるライブ「Heavy Metal Nite」が開催されたのですが、ここでは後にHR/HMとも呼ばれるハードロック/ヘヴィ。メタルのバンドが数々参加していました。
ここからハードなサウンドは芽吹いていき、スラッシュメタルの大御所となったメタリカが誕生するきっかけになったというわけですね。
1983年のデビュー作である「キル・エム・オール」ではモロにこの先輩たちのサウンドの力を取り入れまくった楽曲が確認できます。
メタリカの功績
彼らのサウンドはアルバムごとに変遷を遂げていますが、グラミー賞を8回受賞しており、ローリング・ストーン誌の「歴史上最も偉大な100人のアーティスト」では61位に選出、ウォール・ストリート・ジャーナルの「史上最も人気のある100のロックバンド」では8位に名を刻むなど、過激な音楽性でありながら高く評価されています。
1990年代から2019年までには全世界でのアルバム総売り上げが1億2000万枚とメタルバンドでトップの成功を収めているので、まあその人気と影響力は計り知れませんね。
ちなみにアメリカでは四大音楽賞といわれるグラミー賞をはじめ、アメリカン・ミュージック・アワード、ビルボード・ミュージック・アワード、ロックの殿堂のすべてを獲得しています。
世界的にもメガヒットであり、さらに本国アメリカでの偉業は半端じゃないですからそりゃ現在でも崇められており、1981年の活動開始から現在まで精力的に音楽やってるのでまさにモンスターバンドです。
ちなみに攻撃的なサウンドが目立ちますが、彼らの詩世界はけっこう知的なのもポイント。文学作品や映画などの引用をしながら、内面世界や死、孤独、狂気といったものを表現しているため、ただデタラメに暴力的かつ攻撃的な楽曲ではありません。
(まあマジの州立刑務所でミュージックビデオ撮影して、バックに映る鮮やかなオレンジ色のつなぎ来た人たち全員がエキストラじゃなくて本気の囚人ったりそんなこともしてますが)
ですが後述するメンバー紹介でも触れますが、新メンバーに対して陰湿ないじめかましたりと「なんだそのダサい行動は!?」ということやらかしたりしてます。
人間らしいっちゃ人間らしいですが、あと理由がちょっと複雑な要素入ってたりするので一概に悪ともいえないような気もしますが、それにしても暗ぇよやることが。
スラッシュメタルについて
メタリカは楽曲にアコースティック・ギターを取り入れたり柔らかな要素もプラスしていますが、基本的にスラッシュメタルとは名前からも察するように凶暴かつ激しいイメージそのまんまの曲が多いです。
スピード感あふれるギターの速弾きや、繰り返されるフレーズであるギターリフのメインにして(繰り返すとはいっても高速かつ複雑だったりで手につけやすいフレーズでもないことが少なくないですが)、ヴォーカルは音程をガン無視して歌ったり叫び散らしたりと自由、というか攻撃的で暴力的。
別にこの雑で粗暴なのが決まりというわけでもなく、ハイトーンで綺麗に歌うヴォーカリストもいますが、多くは暴力的、で攻撃的。
ドラムも速いし手数も多いし、暴力的で攻撃的。速さが売りで「人間がこれ叩いてるの?」というようなドラミングが有名なドラマーも数多くいるのが特徴です。
このドラムビートはスラッシュビートとも呼ばれ、特徴的なドラムパターンが用いられることが多いです。
スラッシュメタルを生み出したともいわれるメタリカですが、この頃にはほかにもスラッシュメタルで殿堂入りする有名バンドが次々に誕生しています。
ニューヨークのアンスラックスやロサンゼルスのスレイヤー、メガデスといった後にスラッシュメタル四天王と呼ばれるバンドが勢揃いすることになります。
メタリカ、アンスラックス、スレイヤー、メガデスは後のバンドにも大きく影響を与えたメタルの大御所ともいえる存在で、2019年に活動停止したスレイヤー以外は2022年現在も現役というのが驚きです。
メンバー紹介
現メンバーをメインに紹介しながら、現メンバーじゃないけど災難に見舞われたメンバーやら中心だった人物を紹介していきたいと思います。
ジェイムズ・ヘットフィールド
メタリカのギタリストでありボーカルでもある彼は、速さと重さのある演奏が得意でありメタリカの曲の多くのリフ、つまりギターのコード進行を作り出しています。
ギターリフについて聞かれた際、ギターリフをシャープで速くするためにはダウンピッキングが重要だと語っています。このダウンピッキングとは上から下に向かって弦にピックを当てて音を鳴らし続ける演奏であり、ロックやハードな楽曲にはよく用いられる奏法です。
また、このような激しいサウンドだけでなく、1音ずつ鳴らしていくアルペジオ奏法で切なさや感慨深さを指弾きで生み出すなど音楽性の幅もあります。
身長185㎝のタトゥーまみれの真っ黒い服着たルックスからギャップのある演奏ってのもいいですね。多面性があるという感じで人間味にあふれています。
ちなみにボーカリストとしては野太い声が特徴的なのでこれは見た目通りのパワフルさが魅力といったところでしょうか。
ファーストアアルバムの時点ではハイトーンのシャウトなども使っていましたが、年を重ねるについてぶっとい声にどんどん寄っていきました。
カーク・ハメット
彼もギタリストであり、メタリカではギターソロを務めます。レコーディング時は正確かつスピード感あふれるリフやソロを演奏するのに対して、ライブでは自由気ままにアドリブを入れて自由に演奏するのも特徴です。
元々はちゃんとレコーディング時のように正確に弾こうとしていたようですが、年々そのこだわりがなくなっていったようです。
あまりにこだわりがなくなってリズムがズレたりピッキングをミスしたりすることも多いようですが、正確に弾けばいいわけではないですからね。
音楽の趣味はメタル以外にも幅広く、ブルースやジャズ、現代音楽的なサウンドなど幅広い音楽に親しんでいるため、楽曲にもその懐の深さが表れています。
幅広さでいうとホラー映画やアニメや特撮が好きで、日本のアニメもかなり好んでいるのもポイント。
ウルトラマンや仮面ライダー、鉄腕アトム、北斗の拳やデビルマンなど、思いっきりジャパンカルチャーなものもかなり好きだとか。
ロバート・トゥルージロ
ベーシストであり低く構えた体制から指弾きする姿が印象的なメキシコ系のアメリカ人。
基本的にはツーフィンガー奏法という人差し指と中指を使った指弾きでのベース演奏が多いですが、ピックもちゃんと持っています。
指弾きもツーフィンガーだけではなく、指のコンディションやら筋力のことを考えてさまざまな弾き方を使い分けているというアスリート的な配分を行なっている点が、わりとちゃんと考えて弾かれてるんだなと。
ちなみに父親は地元の高校教師で、母親がモータウンというソウルミュージックを中心とするレコードレーベルのファンだった影響からファンクを聞いて育ちました。
趣味がスケボーとサーフィンだからか、Bボーイ風のファッションを愛用する姿も印象的。
ラーズ・ウルリッヒ
ドラマーであり結成時にメタリカの名前を付けたきっかけでもある人物。
演奏的にはヘヴィメタルの開祖とも謳われるブラック・サバスのドラマー、ビル・ワードの影響を受けており、ダブル・ベース・ドラム(いわゆる2バス)というベースドラムが2つ設置されたドラムを使って高速のドラミングプレイがキャリア初期において特徴的でした。
それ以降は速さだけでなく重さをメインにした演奏や、メタリカの音楽性に合わせて都度演奏スタイルを変化させていき、シンプルなドラムプレイも開拓していきました。
彼のドラムプレイでの特徴として大きなものは、手首の強さを活かして重量のあるドラムスティックを非常に強いスナップで叩くため、音1つ1つがかなり大きく出せるという強みがあります。
ちなみに父親はテニスのプロ選手であり、ジャズ・ミュージシャンという別の意味で強い経歴を持っている方です。
曰く付きの旧メンバー
上記は2022年現在の現メンバーですが、過去には旧メンバーが何人かいまずが、そのなかでも今回取り上げたいのがジェイソン・ニューステッドとクリフ・バートンです。
彼らは過去のベーシストですが、なぜこの2人を名指しで取り上げたいかというと、ニューステッドはバートンが脱退した穴埋めをするためにメタリカに加入したといういきさつがあり、そしてニューステッドがメンバーにクッソ陰湿にいじめ食らったというエピソードがあるからです。
というのもバートンはベースのジミ・ヘンドリックスといわれるくらい伝説的かつ非常に個性的な演奏をする人物だったのですが、彼は1986年のスウェーデンのツアー中の事故によって命を落としました。
メタリカにおいても影響力がかなり強かったとメンバーからも回想されるほどの重要人物だったため、彼が他界したことはメタリカにとって大きな喪失であり悲嘆することでした。
そして代わりに入ったニューステッドは、メタリカというビッグバンドに加入できたことでメチャクチャ喜んでいたのですが、バートンの死を受け入れられていない状態のメンバーの前で喜びまくってるニューステッドの姿が癪に障りまくり、ニューステッド加入直後のアルバムには演奏パートが収録されなかったりめっちゃ小さな音で録音されたり、メンバーがニューステッドの音に合わせて演奏する気がなかったり作曲した曲がぜんぜん使われなかったりと、おもいっきり露骨にハブられていました。
理由が理由だけど攻撃的なサウンドかましてる彼らが陰湿なイジメかますっていうのもそれはそれでショックっていう。もっとスカッとした解決してくれよ。
ちなみにこの件についてメンバーは後に認めて謝罪したようですが、なんかこういうメンバー間のいざこざって嫌だわ。
それでもニューステッドは1990年代をメインに約14年ほど活動していたのでちゃんとメンバーとして動いてたようですね。脱退理由が個人的な理由がいろいろ重なったり、長年の音楽演奏によってダメージが溜まったと言ってるので、なんかツッコミどころがあるような感じもしますが。
楽曲紹介
最後に彼らのスピーディかつ重厚なサウンドの数々を紹介していきましょう。
いろんな意味で暴力的は暴力的ですがけっして力だけで表現しないところが彼らの多面的な魅力でもあります。
けどやっぱり獣みたいに男臭いメンバーから攻撃性全開のサウンド聴けるのもやっぱり必聴!
Master Of Puppets
Enter Sandman
Nothing Else Matters
Creeping Death
One
St. Anger
Hardwired
Blackened