新たな音楽を追求し続ける英国の偉大なバンド「Radiohead」とは?

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昨今はロックバンドが音楽シーンの最先端である、なんてことはなく、ヒップホップ界隈が新たなサブジャンルを生み出して世界中をイカした音楽でチャラく賑わせ続けています。

しかしロックミュージックは現在でも幅広い世代に愛されていますし、ビッグバンドやらスターがロック界から生まれにくくなっているとはいえ、栄華を極めたロックスターの存在はいまでも伝説でありどこでも耳にする偉大な楽曲にあふれ倒しまくっています。

そんな愛すべきロックバンドのなかには、Radioheadというバンドも欠かせない存在。90年台の偉大なバンドなんてそれこそニルヴァーナやらオアシスやらスーパー有名最高バンドまみれの時代ですが、Radioheadも90年代ロック界を代表するバンドです。

今回はRadioheadについて解説していきましょう。

Radioheadとは?

Radioheadはイギリスのロックバンドです。1985年にメンバーたちは全寮制の男子校アビントンスクールで出会い、Radioheadの前身となるバンドを結成しました。1992年にはメジャーデビューを果たしました。

ルーツにはロンドンパンクの流れを受け継いでさまざまな音楽を取り入れたポストパンクや、ポピュラーロックや世間受けする産業ロックとは異なりアンダーグラウンド界隈で盛り上がりを見せたロックジャンルであるオルタナティブ・ロックにあります。

既存のロックに縛られない実験的な楽曲姿勢

そんなポストパンクとオルタナを軸にしつつ、ジャズや電子音楽、クラシックに現代音楽など多岐にわたるジャンルを混ぜ合わせた多様な音楽性が特徴的で、またアルバムごとに音楽性を大きく変えることもRadioheadらしさといえます。

後述しますが、ある時期を境にロックベースからエレクトロニカにシフトチェンジしているため、前期のロックなサウンドか後期の電子音楽的なサウンドを持つRadioheadという姿も彼らの姿。

元々が王道的な音楽に反したロックミュージックや、多彩なジャンルに影響を受けてカルチャーを育てたポストパンクを下地にしているあたり、既存の音楽にこだわらず、むしろ新しい音楽を生み出すことに意欲的なバンドだったのではないでしょうか。

実際にアルバムごとに特色を大きく変えたり、キャリアの前期と後期で音楽スタイルを大きく変えているところからもその現状にこだわらない姿勢を垣間見ることができます。

(クラシックやら現代音楽も当たり前のように混ぜ合わせてるんですから、いかにロックという枠に囚われないようにしているかってのが表れています)

そんな説明をすると一見とっつきにくいバンドに思えますが、アルバム総売り上げは3000万枚を超えていますし、2011年の「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100組のアーティスト」では73位に名前を刻んでいるので、おもいっきり世界的なバンドです。

現に日本でも人気の高いバンドですからね。どこからしら気だるくて陰鬱とした雰囲気があるのが日本受けする理由なのかなと思いつつ、とにかく感情を代弁するような表現というのは音楽の大きな魅力であり力。

(ニルヴァーナもどこか鬱陶しい雰囲気が当時の人々にぶっ刺さって爆発的人気でした。といっても日本に限らず本国アメリカの上手くいってない若者たちやら経済的によろしくない環境だったりと、自己嫌悪にまみれた世相がグランジというブームにつながってというのもあるわけで)

パクリだの一発屋だのボロカスに叩かれた偉大なバンド

とはいえRadio headもニルヴァーナ的にウザだるい感じのサウンドがヒットしましたが、当時はニルヴァーナのパクリだとか言われて無茶苦茶言われてたそうです。

ニルヴァーナがアメリカの音楽でRadioheadはイギリスバンドですが、アメリカに魂売ったと本国イギリスからはボロカスに叩かれ、アメリカのバンドからは「アメリカパクってんじゃねえよ」とボロクソに叩かれ散々でした。気の毒に。まあ雰囲気似てるけど。

ちなみに一世を風靡したCreepという楽曲(さっき動画で紹介した曲)は、ニルヴァーナと似ているのは当然っちゃあ当然という話です。

「パクったからか!?」というわけではなく、ルーツが一緒だから楽曲の雰囲気が似ているというオチ。

1986年に結成されたPixiesというアメリカのロックバンドが、オルタナティブ・ロックの初期を築いた人たちで、彼らのサウンドがニルヴァーナとRadioheadの両バンドにモロ影響を与えたから、別にRadioheadがニルヴァーナをパクったというわけではなく、ニルヴァーナとRadioheadがどっちもPixiesをパク……影響を受けてオルタナロックやってただけです。

ちなみにですが楽曲の作り方自体は50年代や60年代にバンバン作られていたポップソングのコードを採用しているので、過去の音楽をうまい具合に組み合わせたのがRadioheadのCreepでした。過去にあった音楽を採用しつつも、組み合わせが異色だったからかなりセンセーショナルだったわけですね。

以降はCreepのような楽曲はたくさん生まれていますしいまでは珍しくもなんともないですが、Creepみたいな楽曲の原初がCreepだったわけで、彼らのサウンドはやはりオリジナリティに溢れていました。

このようにRadioheadは既存のロックに縛られず、実験的に新しい音楽を生み出すことに初期から積極的だったといえます。(なのにニルヴァーナのパクリだっつって叩かれてるのが気の毒ですが。そんだけオルタナやグランジ界隈で世界規模でアホほど人気を博したのがニルヴァーナだったってことでしょう。)

スクールメイトが作った偉大なバンド

彼らは先に述べたように学校の仲間で作られたバンドであり、大学進学後はメンバーそれぞれが各大学に進学したので離れ離れになりましたが、夏休みを利用してバンドは続いていました。仲睦まじい関係ですね。

メンバーのフィルやエドは大学卒業後、ボーカルのトムが卒業するまで就職こそしていたものの、それはバンドを本格的にやるための待機時間だったのだとか。

1991年には本格的なデモテープを作成して、その頃に今のバンド名Radio headに改名しました。

この手もテープの出来はよく、EMI傘下のパーロフォン・レーベルと契約に成功。1992年5月には4曲入りのドリルというアルバムを出したものの、まだヒットには及ばず、一部のアンダーグラウンド界隈で注目されるに留まりました。

そして2枚目のアルバムを制作することになりますが、ここで運命的な出会いが。

なんと音楽的に大きな影響を受けたPixesのプロデューサーと仕事をすることになったのです。そりゃPixesっぽくなっても当然だろうという話ですね。

まさかの1発録りで生まれた代表曲

しかし順調にレコーディングが進むというわけではなく、けっこう苦戦して楽曲制作が行われていきました。そこでやむを得ず収録されたのが、彼らが毎回リハーサル中に演奏していた楽曲をちょっとイジってなんとか曲にしようというものでした。

そんなんで売れるのかよということですが、これで生まれたのが彼らの代表曲であるCreepです。しかもこのCreepは1発録りでした。そんなサクッと名曲が生まれるとは。ですが案外名曲というのは偶然の賜物みたいな感じでポッと出で生まれたりするものなのかもしれませんね。直感に従ってやったらいいもん生まれるみたいな。

しかしこのCreep、今でこそRadio headを代表する曲になっていますが、歌詞がラジオの放送コードに触れてしまって昼間に流れないというトラブルに見舞われます。(いや歌詞が引っかかってるなら自業自得ともいえなくもないですが)

なのではじめはチャートの最高位も75位止まりでした。ぜんぜん売れる気配が。

とはいえここで諦めるわけはなく、Radio headはライブ活動を精力的に行って地道ながらファンを増やしていきました。いきなりめっちゃ売れたというバンドでもないんですね。

そして年末にはイギリス国内で中物を集めるバンドとなり、NME誌の企画内の「有望な新人バンド10選」に選ばれるようになりました。

そして翌年からはイギリス国内で大規模なツアーを行い、チケットはほとんど売り切れになるほどイギリスを代表するバンドに成長していきます。

ちなみにアメリカでも彼らは本人たちも予想外の出来事として、大人気になります。アメリカではニルヴァーナが一世風靡しておりグランジ大全開だったため、いい感じでニルヴァーナっぽいオルタナティブ・ロックを奏でるRadio headがめっちゃめちゃに受け入れられました。

当時のアメリカのタイムズ紙でも、おもいっきりRadio headのことを「ニルヴァーナのイギリス版」と評しています。これ嬉しいのかどうなのか微妙な表現ですが、ニルヴァーナのアメリカでの影響力を考えるとそれほど凄まじいバンドだと形容されていた、ということでしょう。

キャリア中に音楽性が大きく変わるバンド

彼らの音楽性は実験的なサウンドであったりロックに固執しない楽曲制作のため、時期によって大きく音楽ジャンルが変わることが特徴です。

おおざっぱに分類すると、前期はギターを中心としたロックで、後期は電子音をメインとするエレクトロニカといった分類もできます。

このため、初期のRadio headを好むのか、後期の彼らのスタイルを好むのかで、Radio headの好み方も変わってきます。

なのでアルバムごとに彼らへの触れ方も変えるのがよろしいでしょう。

ギターロック時代のRadio head

ギターロックな彼らの楽曲がお好みであれば、アルバムは「The Bends」や「OK Computer」に触れるのがオススメ。

特に「OK Computer」はイギリスチャート最高1位を獲得しており、バンド史上最大のヒットアルバムでもあるので、とりあえずRadio headに触れたい方はこのアルバムから入るのがよいかと思います。

とは一応補足すると、「OK Computer」はあまり明るい雰囲気の楽曲イメージではないので、暗い雰囲気を好まない方は「The Bends」を聴くのがいいかもしれません。

アルバムごとに音楽性が違うので、一つのアルバムを聴いただけで「このバンド嫌や!!!」となるのはもったいないバンドです。同じロック時代でも雰囲気がけっこう変わるので、気になる方はどちらにも触れてみてください。

エレクトロニカ時代のRadio head

エレクトロニカな彼らのサウンドがいいという方は、最近の彼らの活動に着目するのがいいでしょう。

ちなみにエレクトロニカは電子音楽のジャンルですが、クラブでガンガン流れてるような電子音楽とは異なり、ざっくり言うと癒しや不思議な雰囲気、幻想感、浮遊感などを抱くような音楽ジャンルです。

そのため非クラブミュージックとも形容されます。

なので彼らのどこか不可思議な楽曲世界に誘われたいという場合は、「A Moon Shaped Pool」に触れるのがいいでしょう。

とにかく初期の彼らの楽曲と、最新の楽曲が明らかに大きく音が異なるため、ロックから触れたければ初期のRadio headに触れ、エレクトロニカが好きな方は最新のアルバムや楽曲から彼らの音楽を遡っていくのがオススメです。

ちなみに彼らはエレクトロニカをごっそり楽曲に取り入れたのは2000年にリリースした4枚目のアルバム「Kid A」です。この楽曲では実験的な試みが多くみられるため、彼らの音楽キャリアの変換器にあたるアルバムといえるかもしれません、

この曲のインパクトはRadio headファンのみにならず、世間的にも与えたインパクトが強いため、Radio headの魅力にハマった方はこのアルバム前後で彼らの音楽スタイルを聴き比べるのもいいでしょう。

今なお実験的に音楽制作に取り組むRadio head

現在進行形でストイックに新しい音楽を追求している彼らの音楽は今なお世界中に大きな影響を与え、そして多くの人々に愛されています。

実験的に新しい音楽を模索する彼らの姿勢が表れた楽曲はどこか不可思議な世界観があり、新たな価値観や発見に出会えるかもしれません。

これを機会に彼らの音楽世界に触れて人生の一部にしてみるのはいかがでしょうか。