指先ひとつ、それ一本で様々な音色を奏でられる楽器というのはそれだけで人々を惹きつける魅力があります。
そんな楽器の一つとしてギターも挙げられるでしょう。バンドの構成の一つとしてだけでなく、単体でも曲を演奏できるギター。
幅広い音色を生み出すギターの魅力を引き出すために、今回はギターの特徴や歴史を紹介しましょう。
ギターとは?
ではそもそもギターと一口に言っても、どんな楽器かいまいち把握していない人もいらっしゃるかと存じます。
というわけでギターとはどんな楽器かから説明していきたいと思います。
ギターは基本的に6弦の楽器です。ロックバンド内では同じ弦楽器にベースがありますが、こっちは4弦の楽器です。
6弦の楽器とはいっても、ギターには大きく分けて3つの種類があります。
ギターの種類は弦の種類や電気を通しているかなどが区別するポイントになります。
アコースティックギター
通称アコギで親しまれているギターです。
アコースティックギターに用いられているギターはスチール弦です。スチール弦は硬いため、1本ずつ弦を押さえて弾いたり、6本まとめて弾いて鳴る音を変えることができます。弦が硬いため、はじめは弦を押さえること自体も一苦労。
クラシックギター
主にソロ演奏で使用されるクラシックギターは、ピアノと同じようにメロディと伴奏を1人でこなすことができます。
弦がアコースティックギターとは異なり、柔らかいナイロン弦やガット弦を用いるのも特徴。弦が柔らかいため、スチール弦よりも温かく柔らかな音が鳴ります。
エレクトリックギター
エレキギターとも呼ばれ、その名の通り電気を使って演奏する楽器です。
金属でできた弦の振動を電気振動に変換するのがなによりもほかのギターとは異なる点。
アンプと呼ばれる音を増幅する機械に信号を増幅し、さらにスピーカーを慣らします。
ちなみにアンプとはアンプリファイアという「増幅」を意味する言葉からきています。
エレクトリックギターはこのようにさまざまな機材を用いるのも特徴の一つといえます。機材の調整によって音色も幅広く変化できますし、激しい音を生み出すのはエレキならでは。
ギターの歴史
ギターは弦楽器の一つです。
弦楽器とは張られた弦を使って演奏する楽器ですが、この張られた弦のルーツとはある武器です。
弦のようなものが張られた武器というと、思い浮かぶものはなんでしょうか。
それは弓です。
実際に古代の壁画や彫刻からは、ギターに類似する弦楽器が描かれていたといいます。
なんと3700年も前のものに描かれたといいますからすごいですね。
では、この頃のギターのような楽器はどのような構造をしていたのでしょうか。
それには大きく分けて2つの種類があります。
1つは弦に共通箱をつけて音を出すタイプです。共鳴箱とは共鳴器と呼ばれるものの一つで、一定の振動数の音だけに共鳴するように作られた箱です。中は空洞になっていて、木箱などが用いられます。この共鳴箱の要素を持つ楽器は、シタールやリュートなどです。
もう一つのタイプは弦同士を共鳴させて音を出すタイプの弦楽器です。あまりイメージが湧きにくいかおmしれませんが、ハープがこのタイプの弦楽器に当てはまります。
ギターはこの2つの要素が組み合わさった楽器で、紀元前3000年頃にはギターの原型となるものが生まれました。
この原型の楽器は、串状ネックリュートと呼ばれています。
この串状ネックリュートは、胴がギターのようにくびれていたとされています。腰の部分には女性を彷彿とさせるくびれがあり、両側には湾曲した円弧の5つおんサウンドホールを持っていたとされています。
この楽器は1400年以上前の新ヒッタイト帝国のアラジャヒュコク遺跡の石でできたスフィンクス門にあるレリーフにも描かれているそうです。
古代の遺跡の壁に描かれていたというのが、いかに楽器が、つまり音楽が人々の生活の一部になっていたかが窺えます。
ヨーロッパに伝わったギター
ギラーの原型が完成してからはさまざまな進化を遂げていきます。
ギリシャ時代には板で組み立てられた共鳴胴が、密着されたブリッジを持つようになりました。
ブリッジとは駒とも言われ、弦楽器において弦を楽器本体に接触しない位置で保持するものです。
かつ、弦の振動を効率よく共鳴胴に伝える部品です。
これら弦楽器は発展していくことになりますが、しばらく弦楽器の進化は止まることに。
この進化に貢献したのは、ギターの原型といわれるリュートがヨーロッパへ持ち込まれてからです。
711年頃にヨーロッパへギターは持ち込まれたといわれていますが、これはじつに1000年ほど弦楽器の進化が止まっていたのです。
しかし、ヨーロッパへ持ち込まれたリュートはあまり支持されなかったのだとか。
代わりにポピュラーになったのはビウエラという楽器。これはギターにすで形が似ていて、弦で弾く撥弦楽器でした。
(余談ですが、最古の撥弦楽器は狩猟民が使っていた弓に、木の実や獲物の獣の頭蓋骨などを出して音を出していたのだとか。ピック代わりに木片や鳥の羽を使用していたそうです)
中世におけるビウエラは単に楽器単体を表すのではなく、弦楽器全体を表す言葉でもありました。
そしてスペインの舞踏用に改良されてギターへと進化していったのです。
ギターという言葉自体は、13世紀には文献に載っています。そのときはギターレと記載されていました。
16世紀から18世紀には複弦といって、2、3本の弦を1セットに張ったものがすべてでした。
4対のものはルネッサンスギターと呼ばれ、5弦のものはバロックギターと呼ばれていました。
それから技術が進歩し、巻き弦と呼ばれるものが1700年台後半に登場して、6弦目を加えることができました。
それまでの技術では、密度の低い弦しか作れずに低音用の弦が作れませんでしたが、この技術革命のおかげで高密度で重い弦を作ることができるようになったため、実現に至ったのです。
クラシックギターの登場
さて、このあたりからようやくギターが現代の様相を見て始めます。そろそろ耳にしたことのあるギターも登場してくる頃です。
18世紀からはさらにギターが進化することになります。ギター本体であるネックとは独立した指板、いわゆるフィンガーボールが取付けられました。これで現代のギターの見た目にもどんどん近づくだけではなく、金属製のフレットという部分が打ち付けられて耐久性と音色がアップしました。
そのほかにもギア式の弦巻きが取り付けられたり、表の板に貼り付ける放射状に伸びたファンブレーシングを導入してギターの楽器としての機能が向上していきました。
19世紀後半に入ると、遂にクラシックギターが開発されます。
スペイン出身のアントニオ・デ・トーレスがクラシックギターの原型となるギターを製作しました。
19世紀のギターは、現在のものよりも小さくで音量も出なかったため、大規模なコンサート会場での演奏には不向きでした。
そこで彼が製作したギターはボディの大型化や弦の延長を実践し、音質と音量を改善したのです。
さらに、サウンドホールの金属筒などさまざまな工夫をこらしていき、トーレスの生み出したギターは現在のクラシックギターの基本的な形状をしていたといいます。
アコースティックギターの登場
クラシックギターの登場とは別で、現在でも世界的に有名なブランドの創始者も登場します。マーティンというブランドを耳にしたことがある方は、アコースティックギターに知見のある方でしょう。
その創設者はクリスチャン・フレデリック・マーティン。彼は元々はドイツで家具職人を営んでいましたが、ウィーンスタイルと呼ばれるギターを生み出したシュタウファーに弟子入りしてギターのノウハウも学びます。
そして彼の名前を冠するブランドは、1833年にドイツからニューヨークに移住して工房を構えとからスタートします。
当時のアメリカにはこれといって楽器メーカーは存在せず、楽器は主にヨーロッパで作られたものばかり販売されていました。
マーティンは生まれのドイツである程度ギターづくりの腕を開花させていましたが、アメリカでは販売ルートを開拓するのにも苦労したといいます。
さらに、ニューヨークの大都会にも馴染めなかったため、1838年には拠点をシルバニア州ナザレスの郊外に移して、ギター制作に打ち込める環境に身を置きました。
ここからマーティン社は成長し、さらにギター製作で新技術を開発していくことに。
1850年代にはブレイジングで新技術を開発しました。ブレイジングとはトップ材の裏側にあてる細い力僕で、音色やギターの補強などに左右する部分です。このブレイジングは当時、平行に並べたり扇状に並べるものが一般的でしたが、魔0ティンはX状に交差させるようにしてブレイジングをデザインしました。
これはXブレイジングと呼ばれるもので、今までとは比べ物にならない美しい高音や力強い低音を実現するに至りました。
このXブレイジングによって作り出されるギターは独特の魅力的なサウンドを生み出すことになり、ブランドのギターは多くのギター奏者から求められるようになったのです。
このように、現代のアコースティックギターの源流を作り出したマーティン社。以降も息子たちに引き継がれていき、マーティン社はアコースティックギター界で栄華を誇ることになります。
エレクトリックギターの出現
1932年には、ある革新的なギターが生み出されました。世界初のエレクトリックギターといわれるフライングパンの登場です。ちなみにこのグライングパンは、現在でもエレキギターのブランドとして有名なリッケンバッカーが作り出しました。
ただしこの時点ではまだ一般には流通せず、あくまでマニア向けの嗜好品でした。
弦楽器に電気を通すという発想は、なにも突然生まれたわけではありません。
20世紀初頭、1910年代にはヴァイオリンや、バンジョーというアメリカ系アフリカ人の楽器の特徴をもつ撥弦楽器バンジョーなどの内部に電話の受信機を取り付ける試みがなされていました。
なんでそんなことをしたのかというと、音を増幅させるためです。ほかにも音を増幅させるチャレンジは果敢に行われ、1920年代にはカーボン・マイクロフォンを弦楽器のブリッジ部分(ボディに取り付けられた台座部分)に取り付けて音を増幅させる実験も行われました。
この頃には多くの人がこのような電気楽器の発明に乗り出しており、フライングパン以外にも同時期に発明されていたエレキギターがあります。
1931年にジョージ・ビーチャムによって発明されたギターも、電気的に音を増幅させるものであり、1932年には商業生産もされています。
それから1940年にかけて新しいモデルが次々に登場していき、一般にもエレキギターが広がっていきます。
なかでもソリッドギターとよばれる、1枚のいたからボディを削り出したギターは本体の空洞がないため、共鳴しにくい特徴を持つことができました。
これは、エレキギターの進化においてとても重要です。ボディに空洞がある従来のギターでは、アンプで増幅した音に楽器が共振してしまい、耳障りな音が出る欠点があったからです。
まさに電気を通すギターを生み出す必要があり、その過程でアイデアを磨き上げて電気ギターに反映させてき、1949年にはエレキギターで有名なブランドの始祖であるレオ・フェンダーが、初の商品化ソリッドギターを世に生み出したのです。
これが世界的に有名なフェンダー社の商品というわけですね。
(余談ですが、いまでこそエレキギターやアンプの世界的有名ブランドであるフェンダーですが、当のレオ・フェンダーはギターではなくサックスを演奏しており、チューニングすら知らないとギターには無縁であったそうです。)
紀元前から現代まで進化を遂げたギター
1950年代以降は楽器の進化が止まることなく、エレキギターも1960年代には完成していました。
それからはボディに木材ではなくプラスチックやグラスファイバーを使用したり、様々なアイデアが実践されては廃れるを繰り返し、現代の楽器も新たな技術によって改良を加えられ続けています。
紀元前はるか昔から生み出されたギターは、さまざまな進化を遂げて現代に生きています。
ギターは音の問題もありますが、現代では音を発生しにくいサイレントギターなども開発されていますし、練習もインターネット越しで簡単に独学でも学ぶことができます。
歴史に触れたことでギターへの興味が出た方は、ギター自体に触れる興味を持ってみてはいかがでしょうか。